トオルは、クロベエに呼びかける形で、こんなにたくさんの人がオマエのために集まってくれている、それ以外にも、来れなかった人からも俺はいっぱいメールをもらったぜと言った。
そして「オマエはいつも遅刻ばっかりしてたのに、こんなときだけ先に行くな!全然時間軸が合わんやんか!」と言ってまた声を詰まらせていた。
画面に目をやっていたファンからも一斉にすすり泣く声が漏れていた。
でも、みんなトオルの言葉を聞き漏らすまいと、声を殺し、耳を澄ましている。
みんなでクロベエのお見舞いに行ったとき、トオルが「明日の朝、早いんだけど起きられるかな」と言っていたら、次の日の朝、クロベエから「起きてますか?」というメールが届いてすごくうれしかった、とトオルは言った。
「起きてますか?」っていう言葉が、ホントにクロベエらしいなと思う。
トオルの弔辞で、優しかったクロベエのことを思い出し泣いていたファンであるが、裕ちゃんの挨拶の前の紹介の「大土井さんはアブラーズで会計を担当されていて」という部分に「やっぱそれ言うんだ」という突っ込みが入ったり、紹介された裕ちゃんが謀らずも仁王立ちだったのを見て思わず笑ってしまったりしているのを見て、「ああ、私たちは生きてるな。前を向いて生きていかなきゃいけないんだな」とちょっと目の前が開けた気がした。
そしていよいよ会場内に入り、ようやく入ってすぐのトイレに駆け込む。
用を足して、元の列に戻り(ほとんど進んでいなかった)、あまりの安堵に、もうすぐ献花だと厳かな気持ちになっている人たちの前でちょっとトイレのことで盛り上がってしまい、かなり申し訳なく思った。
ごめんなさい。
でもこれで帯グラフは100%クロベエである。
係員から花を手渡され、献花の列に加わる。
祭壇にはクロベエのドラムセットとアブラーズのツアーで着ていたスーツが飾られ、その上にそのスーツを着てニヒルに笑っている遺影があった。
病気になってからの写真だから、顔もやせてしまっていて、私の心の中のクロベエとはちょっと違っていたが、表情はホントにクロベエらしかったことがせめてもの救いであった。

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