百合の蜜

2000年11月7日 旅行
今日は熊本に出張だった。
まぁ、たいした出張ではないのだが。
夕方にはそのしょぼい出張も終わり、私は博多へと向かった。
明日、新宿でトオルのライヴがあるので博多から東京へ直行の夜行バスに乗ることにしたのだ。
この路線に乗るのは初めてだった。
私の隣りの席はショートカットで童顔だが、実は案外いっていそうな女の人だった。
推定33・4歳といったところか。
バスの中で私のピッチが鳴った。
その電話で私は「持ってきた本をもう全部読んじゃったからつまらない」という話をした。
そして電話を切ると隣の席の女の人が「読みます?」と分厚い少女漫画雑誌を差し出してきた。
内心「わ、盗み聞きされた」と思ったし、正直言って少女漫画はあまり読まないほうなのだが、せっかくのご厚意なので甘えることにした。
今となっては残念なことに誌名を覚えていないのだが、表紙に「オール読みきり」と書いてあった。
巻頭カラーの1話目を読んでいて「あら?」と思った。片想いに悩む女子高生が主人公のラブロマンスという、言ってしまえばありがちなストーリーだが、決定的に違うのは恋のお相手もまた女だという点だ。
「あら?あら?」と思いつつ読み進めていくと最後は女同士でくっついてハッピーエンド。
これでよいのか?と2話目を読むと、2話目はもうモロにえぐいレズ話で「まぁまぁ、そんなことまで・・・」というような内容であった。
どうやらこの本は一冊まるまるレズコミックらしいのだ。
私は非常にひいた。
そして、直ちにこの本を返さねば、と思った。
いつまでも読んでいてこの女に「脈あり!!」とでも思われたらたいへんである。
私はつとめてなにごともなかったかのように「ありがとうございました」と言って本を返した。
女は「ああ、もういいんですか」と言って受け取った。
そのあとずっと、この女になにかされはすまいかと気が気でなかった。
隣りとはいえ奴のほうが若干後ろなので、すっと胸のあたりに手が伸びてきそうで、小鳩のように震えながら一夜を過ごした。
結局なにもされなかったのだが、私がもしあの雑誌に興味を示していたならば何かが変わっていたのだろうか?
もしかして私、残念がってる???

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