私の勤めている病院では年に2回健康診断がある。
夜勤に入らない人は年に1回でいいようなのだが、私は夜勤をしているので春と秋に健康診断を受けなくてはならないのである。
まだ40にはなっていないので心電図などはなく、血液検査・検尿・レントゲン・血圧・視力・聴力といったカンジである。
そしてそれぞれの結果をもとに医師の診察がなされる。
私は持病持ちなのでこの診察が非常にイヤなのである。
検査の結果についてネチネチ言われ、通院しているというと「どこに?」、「○○先生はこの数値で何も言わないのか?」、「うちの病院に転院したら?」などと恫喝気味に言われる。
私は自分の先生を信頼しているからよいのです。
それだけならまだしも、もう少しやせた方がいいと現体重を大声で言うのはぜひやめてほしい。
内科の看護婦さんが周りにいっぱいいるし、外の待合室には診察町の同僚が待っているのである。
そんなイヤな診察に今日の午後呼ばれたのである。
「ああ、イヤだな」と思いつつ、師長から検査データとレントゲンのフィルムを受け取る。
それらを持ってエレベータに乗り、レントゲンのフィルムをまじまじと見るとなにかおかしい。
この胸の下にある線はなに?
この胸の間に見える小さい異物はなに?
すごく見覚えがあるカンジはするんだけど・・・。
特にこの胸の間にある物。
エレベータが5階から1階に到着する頃はたと気づいた。
これ・・・ブラのホック・・・。
ギャ―――――!!
あろうことか、私はレントゲン撮影のときブラをはずし忘れていたのである。
両肩の少し下辺りに肩ひも調節金具、胸の間辺りには3段のホック、そして両胸の下にはワイヤーがくっきりと写っている。
いつも患者さんをレントゲン室に連れて行くときには「心電図モニターとか機械はついてないですよね?下着にボタンや金具はついてませんか?」としつこいぐらい確認するのに!
自分の診察の番が来て、おずおずとフィルムを差し出すと、医師は眉根を寄せ顔を曇らせ注目していたが、すぐにそれがなにか気づいたようで「ああ、下着の金具だね」と言って笑った。
それで気分がほぐれたから持病に対する追求が少なかったのか、追求されたけど恥ずかしさのあまりよく憶えていないのかは不明だが、とにかく無事に春の健康診断は終わったのであった。

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