お父さんの透析日
2006年9月6日S田さんという患者さんがいる。
今、入院しているのは奥さんの方であるが、旦那さんもうちの病院のリピーターである。
夫婦で代わる代わる入院してくるのだ。
実はこういう夫婦は珍しくない。
S田さん夫妻ほど頻繁なのは稀であるが、この前付き添いしていた旦那さん(または奥さん)の方が今度は入院してきて、この前入院していた方が今度は付き添うということはままある。
S田さんの旦那さんの方は長きに渡って週に3回人工透析に通っているので、入院していないときでも院内で顔を合わせることが多い。
奥さんの方はどこが悪いのかはよく知らないが、時々ひょっこり入院してくる。
どちらも一見わりと元気な患者さんで、大部屋で同室の患者さんとわいわいやってはいつの間にか退院していたというカンジである。
奥さんの方はきぃくん(氷川きよし)の大ファンで病室でFCの会報を見ていたりもした。
そんな奥さんが、今回非常に悪い状態で救急車で担ぎこまれてきた。
人口呼吸器がつけられ、目は虚ろ、声かけに肯いたり首を振ったりはするが、質問の内容と返答はかみ合っていなかった。
数日後、呼吸器はなんとかはずれたものの状態はよくなく、奥さんの方も人工透析を開始することになってしまった。
しかし、自分が透析を受けているということには気づいておらず、「ここはどこかわかる?」と聞いても首をかしげ、年齢を聞いても呂律の回らない口調で10歳以上若く言うなど、意識が朦朧とした状態であった。
そんな中、S田さんの氷枕にタオルを巻こうとしたら、棚にはもうタオルが1枚しか残っていなかった。
私はS田さんに言うともなしに「あらー、タオルがもう1枚しかないよ。明日お父さんが持って来るかねぇ?透析の日だったら朝透析前に顔を見せてやろうけどねぇ」と言うと、S田さんがおぼつかない口調で「明日は何曜日?」
「今日が火曜日だから、明日は水曜日よ」
するとS田さんが「水曜日なら透析の日だからお父さん来るよ」。
調べてみると確かに水曜日は旦那さんの透析日であった。
自分が透析をされていることすらわかっていない状態なのに、旦那さんの透析日はちゃんとわかっていることに私は深い感銘を受けた。
その頃はきぃくんの話題を振ってもまったくのノーリアクションだったS田妻だったが、最近ようやくきぃくんの話に反応し始めた。
元気な頃は「お父さんよりきよしくんの方が大事」と言っていたS田妻がもう少し元気になったら今回の話をしてやろうと、その日がくるのを楽しみにしているのである。
今、入院しているのは奥さんの方であるが、旦那さんもうちの病院のリピーターである。
夫婦で代わる代わる入院してくるのだ。
実はこういう夫婦は珍しくない。
S田さん夫妻ほど頻繁なのは稀であるが、この前付き添いしていた旦那さん(または奥さん)の方が今度は入院してきて、この前入院していた方が今度は付き添うということはままある。
S田さんの旦那さんの方は長きに渡って週に3回人工透析に通っているので、入院していないときでも院内で顔を合わせることが多い。
奥さんの方はどこが悪いのかはよく知らないが、時々ひょっこり入院してくる。
どちらも一見わりと元気な患者さんで、大部屋で同室の患者さんとわいわいやってはいつの間にか退院していたというカンジである。
奥さんの方はきぃくん(氷川きよし)の大ファンで病室でFCの会報を見ていたりもした。
そんな奥さんが、今回非常に悪い状態で救急車で担ぎこまれてきた。
人口呼吸器がつけられ、目は虚ろ、声かけに肯いたり首を振ったりはするが、質問の内容と返答はかみ合っていなかった。
数日後、呼吸器はなんとかはずれたものの状態はよくなく、奥さんの方も人工透析を開始することになってしまった。
しかし、自分が透析を受けているということには気づいておらず、「ここはどこかわかる?」と聞いても首をかしげ、年齢を聞いても呂律の回らない口調で10歳以上若く言うなど、意識が朦朧とした状態であった。
そんな中、S田さんの氷枕にタオルを巻こうとしたら、棚にはもうタオルが1枚しか残っていなかった。
私はS田さんに言うともなしに「あらー、タオルがもう1枚しかないよ。明日お父さんが持って来るかねぇ?透析の日だったら朝透析前に顔を見せてやろうけどねぇ」と言うと、S田さんがおぼつかない口調で「明日は何曜日?」
「今日が火曜日だから、明日は水曜日よ」
するとS田さんが「水曜日なら透析の日だからお父さん来るよ」。
調べてみると確かに水曜日は旦那さんの透析日であった。
自分が透析をされていることすらわかっていない状態なのに、旦那さんの透析日はちゃんとわかっていることに私は深い感銘を受けた。
その頃はきぃくんの話題を振ってもまったくのノーリアクションだったS田妻だったが、最近ようやくきぃくんの話に反応し始めた。
元気な頃は「お父さんよりきよしくんの方が大事」と言っていたS田妻がもう少し元気になったら今回の話をしてやろうと、その日がくるのを楽しみにしているのである。
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