真に受けるオンナ?

2006年5月27日
ヤマノさんという男性患者さんがいる。
このヤマノさんもけっこうなリピーターであるが、別に頭もはっきりしているし、自分のことは自分でできる、年齢(70代後半)よりもむしろ若々しい患者さんである。
ただ今回の入院時は、一時的に足元がおぼつかなくなっていて奥さんが付き添っていた。
しかし私たちの間では「あの奥さんのほうがちょっと心配だよね」と言うぐらい、ちょっぴりピントの外れた介護をするばあちゃんであった。
付き添いさんの中には自分の家族である患者さんのことを露悪的に言う人がけっこういる。
たまたまちょっと勘違いしてヘンなことを言っただけで「ごめんねー。うちのばあちゃんボケてるから」と言ったり。
たぶんこっちにそう思われると恥ずかしいから予防線を張って先に自分から言うのであろうが、はっきり言ってそういう言い方は好きではない。
そしてヤマノさんの奥さんもちょっとそういうところがある人であった。
ちょっと私の問いかけに対してヤマノさんの返事が遅れると「うちのじいちゃんは耳が聞こえんから」。
別にヤマノさんは耳が遠いことはなく、むしろいい方だと思う。
ただ単に考える時間が必要だったために返事が遅れたのだ。
そして奥さんはよりによってアホヤマさんにもそういう言い回しをしたらしい。
アホヤマさんは私の元に走ってきて言った。
「知ってました?ヤマノさんって全盲らしいですよ」
はぁー?
「そんなわけないでしょう。ご飯だって自分で食べてるし、テレビだって見てるじゃないですか」
「たぶんご飯は勘で食べてるんでしょう。テレビは音だけ聞いているんじゃないですか」
「だって今は足元がちょっとおぼつかないけど、前の入院のときだって一人で歩いてうろうろしてたじゃないですか」
「でも奥さんが言ってましたよ。目が見えんって」
真に受けるなよ!
お年寄りは耳が遠いことを「耳が聞こえん」と言ったり、老眼で小さい字が読めないことを「目が見えん」と言ったりするではないか!
しかも奥さんが「目が見えん」と言ったのを勝手に全盲って通訳すな!!
もちろん全盲というのは完全な濡れ衣で、むしろヤマノさんは看護婦さんですらたまに間違う私とヨシダさん(同僚。体型が似ている)の区別すらばっちしついているのであった。
もう一回言う。
アホヤマさん、あなたホントにアホでしょう?

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