私を見て!!?

2006年4月23日
何が見えるの、寮母さん、あなたには何が見えるの
あなたが私を見るとき、こう思っているのでしょう。
気むずかしいおばさん、利口じゃないし
日常生活もおぼつかなく目をうつろにさまよわせて
食べ物をぼろぼろこぼし、返事はしない
おもしろいのかおもしろくないのか
あなたの言いなりになっている
これがあなたの考えていること、
あなたが見ていることではありませんか
でも目を開けてごらんなさい、
寮母さん、あなたは私を見てはいないのですよ
私が誰なのか教えてあげましょう。
ここにじっと座っているこの私が
あなたの命ずるままに起きあがるこの私が
あなたの意志で食べているこの私がだれなのか

私は10歳の子どもでした、父がいて母がいて
兄弟、姉妹がいて、皆お互いに愛し合っていました
16歳の少女は足に羽をつけて
もうすぐ恋人に会えることを夢見ていました
20歳でもう花嫁、私の心は躍っていました
25歳で私は子どもを産みました
その子は私に安全で幸福な家庭を求めたの
30歳、子どもはみるみる大きくなる
永遠に続くはずの絆で母子はお互いに結ばれて
40歳、子ども達は成長し、行ってしまった
でも夫はそばにいて、
私が悲しまないように見守ってくれました
50歳、もう一度赤ん坊が膝の上で遊びました
私の愛する夫と私は再び子どもに出会ったのです

暗い日々が訪れました、夫が死んだのです
先のことを考え、不安で震えました
息子達は皆自分の子どもを育てている最中でしたから
それで私は、過ごしてきた年月と愛のことを考えました

今私はおばあさんになりました。自然の女神は残酷です
老人をまるでバカのように見せるのは、自然の女神の悪い冗談
体はぼろぼろ、優美さも気力も失せ
かつて心があったところには今では石ころがあるだけ

でもこの古ぼけた肉体の残骸にはまだ少女が住んでいて
何度も何度も私の使い古しの心をふくらます
私は喜びを思い出し、苦しみを思い出す
そして人生をもう一度愛して生き直す
年月はあまりにも短すぎ、あまりにも早く過ぎてしまったと私は思うの
そして何物も永遠ではないという厳しい現実を受け入れるのです

だから目を開けてよ、寮母さん−目を開けてください
気むずかしいおばあさんでなくて、「私」をもっとよく見て!

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