腹黒かった人?

2005年6月16日
ある日曜日の勤務で、私はウチノさんと2人きりになった。
もうこの頃はそれほどウチノさんのことを疎ましく思う気持ちも消えていた。
日曜日は暇なので、給湯室でお菓子を食べたりしながら話をする時間がけっこうある。
ポテトチップスを食べながら、ウチノさんは唐突に言った。
「私、アキ(アキモトさん)のこと大嫌いなんですよ。知ってました?」
私は「そうなんですか?知りませんでした」と言って、黙ってウチノさんの話を聞いていたが、正直アキモトさんを嫌いだという根拠が、私と全く同じであった。
そして、アキモトさんとは違って、誰々もアキモトさんのことを嫌っているなどということは一切言わず、自分はこういう考えで、だからアキモトさんのこういうところが許せないという、自分の意見に終始していた。
それから、今の職場についてのいろんなことを話したが、思えば産休前のウチノさんは、いつも職場の不満を漏らしていた。
それはけっこう理想論に近いことで、「そうできればいいけど、なかなかそうはいかないだろうよ」と思う内容のことが多かった。
そしてよく「みんなのためにいいと思うんですけど」と言っていた。
私は「みんなのために」とか「あなたのためを思って言う」とか言う人をあまり信じられない。
しかし、今のウチノさんからは「頭に来てしょうがないから言った」とか、「私の意見ですけど」とか言いながらも、実は職場の和を一番に考えて行動していることが、しっかりと私に伝わってきた。
私はうれしくなってウチノさんに言った。
「ウチノさんは子供を産んで人間的に成長したと思いますよ」
ウチノさんは「えっ」と絶句して、その後「うれしー!!」と言って飛び上がって喜んでいた。
「産休から戻ってきてから、みんなに言われることって『おばさんになった』とか、『太った』とかばっかりで、そんな風に言ってくれた人って初めてです」
そういえば私自身も、一度嫌った人のことを、認めて受け入れられるという感覚は、ごく最近になって身についてきたことである。
子供を産んでない私は、こうして年齢を重ねることによって、少しずつ少しずつ成長していくのかもしれないなあと思う。
それもまたよしかもね。

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