その後、いてもたってもいられなくなり、エレベーターで立体駐車場の各階をチェックするが、ブラックボトム号の姿はなかった。
違うところにとめてたんだー。
しかし気づいたのがあまりにも遅く、もう瀬戸蔵自体の電気も消えてしまった後だった。
一応裏も覘くがもちろんあとのまつり。
「どうするー?」
ライヴ前はタクシー代がそんなに高いんだったら笑笑に決まりだなと思っていた私たちだったが、もう精も根も尽き果てていた。
別にタクシーで名古屋に戻ったって、ネットカフェかファミレスで時間をつぶすのだから結局は同じことなのだが、それでもタクシーに乗りたかった。
「タクるか・・・」
そう決めて道端に立った私たちだったが、タクシーはおろか、普通の車さえめったに通らない。
やっとタクシーが通ったと思っても人が乗っていたり、タイミングを逃したりで、そうこうしているうちにどんなに待ってもタクシーは通らなくなってしまった。
私ですらちょっと寒いぐらいなのだから、寒がりのナツコちゃんは先ほどから等間隔で「死んじゃう・・・」とつぶやき続けている。
死なれちゃ困る。
瀬戸蔵に残っていた最後のスタッフの車が出てきて「タクシーを待ってるんですか?」と声をかけてきて、タクシーの営業所の場所を教えてくれた。
寒空の下、とぼとぼとその場所まで行ってみたが、もう営業所の明かりは消えていた。
肩を落とし、もう笑笑しかないと向かっていると、さっきのスタッフの人が来て「もう営業所は閉まってました」。
知ってる・・・。
「もうこの時間だとこの辺は流しのタクシーは通らないから、この先にある朝までやってる居酒屋に行くしかないですねー」
ご親切にどうも。
ということで私たちは笑笑の人となったのだが、店内も外とそう変わらぬ寒さであった。
ナツコちゃんはほとんど死にかけで、私も久々にどえらい目にあったと思ったが、朝になり、始発で名古屋駅に戻り、ナツコちゃんと別れるときにはやっぱり、「サイコーに楽しかった」と言って目を潤ませた私たちであった。

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