復唱?

ヨシザキさんという25歳の看護婦さん、この人は若いのに口やかましいので看護助手から煙たがられている。
言わずにおれない性格なのだと本人が言っていた。
確かにそうなのだろう。
でもこの人は看護理念にのっとって仕事をしているし、若いのにものすごく多岐にわたって勉強しているなーというのが素人の私から見てもわかる。
それよりも私は看護婦さんだけが使うトイレ（私たちは患者さん用のトイレを使っている）のペーパータオルが切れたからといって、私に「補充しといて」というスギタニさんの方がどうかと思う。
それはどう考えても私の仕事ではない。
でも言われればやるのだが。
ヨシザキさんはそういう自分の後始末的なことに関しては、こちらから「しましょうか？」と言っても「そんなことは自分でするよ」と言う。
当たり前のことであるが、その辺はきっちりしている。
ただ、口やかましいのが過ぎるので、看護婦としては非常に正しいと評価している私でさえ、ときどき憮然とするのだ。
今日、私はヨシザキさんに仕事を命じられた。
「泌尿器外来に行って○○さん用のバルンカテーテルのチューブをもらってきて」
比較的簡単なおつかいである。
私は「わかりました」と言って階段を下りようとした。
2・3段下りたとき、後ろから「待って！」というヨシザキさんの声がした。
振り返ると「何もらってくるかわかる？」。
だから○○さん用のバルンカテーテルのチューブでしょ？
なに言ってんだコイツ？と思いながらも「はい」と短く返事をすると「言ってみて」と言うではないか。
「わかりました」っつってんだからわかっているのである。
バルンカテーテルのチューブというものは、なじみのない人にとっては一度では覚えにくい物品かもしれない。
でも私は毎日実際にそのバルンカテーテルのチューブを挿入している患者さんのお世話をしているのである。
私には耳慣れた言葉だし、仮にその言葉に自信がなかったらその場で聞き返す。
初めてのおつかいじゃあるまいし、35にもなって、しかも一般病棟に異動になってヨシザキさんと共に仕事をするようになってから1年以上たっているのに、なんでこんなこと復唱させられないといけないのか。
さすがに私も頭にきた。
「私、35歳にもなってるんで、わからなかったらこっちから聞き返すぐらいのことはできますよ」と言った後で大きな声で復唱した。
「泌尿器外来で！○○さん用の！バルンカテーテルのチューブを！もらってくるんですよね？」
普段穏やかな私（病院では）が声を荒げたので、ヨシザキさんは驚いていたが、あんましなめんなよ！って話である。