普通の人?

2005年2月3日
そんな私だから急性期に移ってからしばらくというものは、なんだか物足りない毎日であった。
療養病棟の患者さんは、窓の外ひとつ見ても「ロケットが飛んでいる」と言ったり、「テレビ塔に息子が上って下りられなくなってるから助けてくれ」と言ったり、それはそれはわくわくさせてくれていたのだが、急性期の患者さんは「今日はいいお天気ね」とか、「今朝は車の通りが少ないと思ったら日曜日だからか」といたって普通なのだ。
つまらん。
私は根っからのツッコミ気質なのだ。もっとボケてくれ!
しかし、しばらくいるうちに急性期には急性期特有の「ボケ」が存在することに気がついた。
それはまさに「急性ボケ」と言うにふさわしいものである。
突然、病に倒れ入院し、環境が変わったことによって、あるいは病や高熱にうかされることによって、いきなりコロッとボケてしまうのである。
これには私は驚いた。
昨日まで淑女だったばあちゃんが、いきなり点滴をぶっちぎってあたり一面血の惨劇。
歩けないはずのオムツ着用の好々爺が、夜中に給湯室にひょっこり現れ「トイレはどこですか?」と言ったときの驚きは、こっちのほうが心臓疾患で倒れそうなほどである(うちの病棟は半分以上心疾患の患者さんである)。
慢性ボケの患者さんに比べ、思い切ったことをやらかすのも急性ボケの患者さんの特徴である。
そして、入院によって発症することが多いため、その患者さんの「素」を知らないので、その人が元々そんな人なのか、一時的にそうなっちゃってるのかの見極めも困難である。
私の痴呆好きは同僚の中では知れ渡っているので、ちょっと怪しい人材を見つけると同僚がすぐに「○○さん(SAKU)の好きそうな人が入院してきたよ」とか「△△さん(患者さん)が昨日から○○さん(SAKU)の好きなカンジになってきてるよ」と報告してくれる。
そしてその病室に駆けつけると、いきなりその患者さんから「ナンマンダブ」と手を合わされたりして「うひょ」と思ったりしてしまうのである。

コメント