ご飯を食べた後はめぐの家に戻って、チェッカーズのビデオを見ることにした。
たった2人の集会。
もし亡くなったのが、トオル、または尚之だったとしても、私たちはその夜逢うだろう。
しかし、それは集会ではなく、トオルを失った私、または尚之を失っためぐのことをもう一方が心配して「一緒にいる」のだと思う。
でも、私たちは同じスタンスでクロベエのことを大好きだったから、2人で受け止めるために「集まった」のだ。
2人という、一番小規模な集まりが、私の心にはぴったりだった。
私がリクエストしたのは「素顔?」。
ツアーの裏をクロベエ自身がホームカメラで撮影したもので、チェッカーズのビデオの中で多分私が一番よく観ているものだ。
そのせいなのか、私の頭にいつも思い浮かぶクロベエはこの頃の姿である。
「こんにちは。徳永善也です」
画面の中のクロベエは短い髪の毛をつんつんさせていて、肌もつやつやでぷっくり、唇も真っ赤で、とても健康そうだ。
もう構成やセリフまで全部覚えるほど見ているのに、やっぱりいつもと同じように「トオルかっこいいー!!」と唸る。
笑うところで笑い、茶化すところで茶化す。
いつもと同じように観ることが、クロベエに対する誠意のような気がした。
それでもところどころ思い出したように泣いていた私だが、ビデオの最後にクロベエが言った、ごくありふれた日常の挨拶に完全にやられてしまった。
「それでは、さようならー」
笑顔で手を振るクロベエのこの姿も、今まで何度となく観てきたものだ。
いつもなら私たちも「さようならー」と手を振り返し、ビデオのスイッチを切る。
でも、今日は私もめぐも「やめて・・・」と言いながら嗚咽し始めた。
クロベエが、「さようなら」と笑顔で手を振りながら、私たちと逢えないところに行ってしまう。
今日だけは「さようなら」と言い返せない私とめぐであった。

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