バカタレ・・・？?

その後もワタセは何度やり直しても伝票と枚数を合わせることが出来ず、リネン担当者が何度も何度も4階病棟まで上がってきてダメ出ししていた。
人のせいにばかりしているからである。
そして私たちはオムツ交換に入ったのだが、3人部屋の患者さんのオムツを替えているときに、ムラシタさんが「バーブ佐竹はまだリネンか合わんでテンパっちょるん？」と言った。
前にワタセが「私は人からよくバーブ佐竹に似てると言われる」と自ら言っていたのだ。
私はそのときバーブ佐竹という人をよく知らなかったのだが、後に顔を見たら驚くほど超そっくりだった。
と言うわけで、バーブ佐竹というのは、本人が聞いたらすぐに自分のこととわかる、ワタセの裏あだ名なのであった。
そして、そのとき当のバーブは、実は同じ部屋の違う患者さんのオムツを替えていたのである。
「ヤバイ、聞こえたかねえ？」とムラシタさんは心配していたが、その後のワタセの様子から判断して、どうやら聞こえていたようであった。
そしてオムツ交換も終わり、私たちは給湯室でお茶しながら終業のチャイムがなるのを待っていた。
5時になると私は帰り、4番勤務のワタセは今日1日の使用済み紙おむつを捨てに行かなくてはならない。
そのオムツ用のエレベーターは給湯室内にあるのだが、ワタセは寄り付かなかった。
おそらく私とムラシタさんが帰るのを待っているのだろう。
基本的にオムツ捨ては2人で行かなければならないので、同じく4番勤務のスコさんが、エレベーターの前でワタセが来るのを待っていた。
しかし5時をすぎても私たちがのんきにお菓子を食べたりしていたので、痺れを切らしてワタセがやってきた。
そしてスコさんがやってきたエレベーターに乗り込みながら「お疲れさまでした」と挨拶をしたので私たちも「お疲れさまー」と返した。
ワタセもオムツカートを押しながら「お疲れ様でした」とスコさんの後を追ったのだが、エレベーターが閉まる直前につぶやいたのである。
「バカタレ」
バカタレ・・・？