ライヴが終わると私はそわそわしていた。しかし私よりも更にそわそわしている人がいたため、100%のそわそわは出すことができなかった。
私よりそわそわしているその人とは土井ちゃんであった。
土井ちゃんはブラックボトムに大変魅せられたようで「ドラマーとしての自分の今後についてよく考えてみる」と深刻な発言をくり返していた。
土井ちゃんはメンバーと写真を撮りたがっていて、私は土井ちゃんからデジカメを受け取り、各メンバーを呼んでシャッターを1回押すたびに「土井ちゃんこれ焼き増ししてね」としつこいぐらい言っていた。
更に土井ちゃんはANTONさんを捕まえて「今ベースドラムを叩いているけど、生い立ち的にはどうなんですか?フルドラムだったんですか?」と食らいついていっていた。
私は心の中で「あー、それはね、元HUMAN SOULのJIMI橋詰さんっていう人がいて・・・」と説明していたのだが、ANTONさんは極さらりと「元々はフルドラム」と結論だけを端的に伝えていた。
ところでIGGYは?とさっきから気になっていたのだが、おおーぅ!なんだ、カウンターにいるではないか。
私はすかさず近寄って行き「IGGYに報告しないといけないことがある」と告げた。
IGGYは、いよいよ私が自分を諦めて結婚でもするのかもしれないと思ったようで、ものすごく期待した顔をしていたが、そんなわきゃあるまい。
「私ね、テナーSAX買ったんですよ」
「マジで?」
私はIGGYのこの「マジで?」が大好きなのだ。
これだけでSAXを買ったかいがあるというものである。
IGGYは思いのほか喜んでくれたみたいで「いつ買ったん?」、「メーカー何?」、「なんぼぐらいしたん?」と、私とIGGYの間にあるまじき話の弾みっぷりを見せた。
私は、今日届いてさっそく吹いてみようと思って組み立ててみたけどリードが入らなかったということを相談してみたが「リードが入らないていう意味がわからへん」と首を傾げていた。
いや、意味も何も、ただ「リードが入らない」のである。
IGGYも私のマウスピースとリードさえ見てくれればきっとわかってくれると思うのだが・・・。

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