あれはまだ寒い頃のことであった。
オオサワさんが「どうしよーう。私の友達がここの面接受けるんだってー。イヤだー」と言っていたので私は驚いた。
「なんで?友達と同じところで働けたら楽しいじゃん」
「でも私その子嫌いなんだもん」
オオサワさん曰く、その子とは家が近所で幼馴染だし、共通の友達が多いのでよく一緒に遊ぶが、その子のことは嫌いなのだと言う。
私にはそういう感情がまったく理解できない。
私は嫌いな人とは友達づきあいはしないからである。
嫌いな人とは遊ばない。
そして嫌いな人のことを友達とは言わない。
単に「同級生」とか「同僚」とか「知り合い」という言葉で片付ける。
だから嫌いな時点で友達ではないのだ。
そのオオサワさんの「友達」は、結局うちの病院の3Fで働くことになった。
しかし、そいつ、ヤマダは、まあ、ホントにとんでもないやつであった。
まずヨゴレ。
ペディキュアを塗って、脚をことさら露出したりして色気づいてはいるが、その脚は虫刺されのあとだらけとか、一事が万事そんなカンジである。
そして3Fの人曰く勤務状態もデタラメらしい。
遅刻・欠勤あたりまえで、しかも謝罪もなし。
そしてまともな時間に来てもチャラチャラしていてまったく仕事をしない。
おまけに誰に対してもタメ態度。
患者さんに対してもなあなあに接しているところを私自身も何度も目撃していた。
私はそういうのが許せないのである。
私の中のルールでは自分より年上の人や、年下でも自分より仕事のキャリアが長い人、または新しく入ってきた人でも年上の人に対しては、よほど親しくなるまでは敬語である。
17歳のオオサワさんに対しても最初は敬語を使っていた。
わずか2週間とはいえ「職場の先輩」だからである。
そんな私だから誰彼かまわずタメ態度をとるヤマダのことは社会人として許せなかった。
3Fの人が誰か教えてあげればいいのにと思っていたが、もう3Fの人も注意し疲れて、半ば野放し状態にしていた。
なんか私に直接関わりがあればガツンと言ってやるのになあと思っていた矢先、入浴介助でヤマダと一緒になる日が来たのである。

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