そのおばあさんをもてあまし、生返事を繰り返していると、雨足がどんどん強くなってきて、ゲートボールをしていたお年寄りたちも、雨宿りにやってきて私とビキはわくわくした。
最近私は自分でも驚くほどお年寄り好きになっている。
この仕事を始めるにあたってとても不安だったのが、私はお年寄りを好きではないということだった。
「年寄り好きじゃないんだけど、介護の仕事できるのかなぁ」
じゃあ介護の仕事なんてしなければいいのだが、それ以外のいろんな要素を考慮すると、私の次の仕事は介護しかなかったのである。
しかし、私はお年寄りが嫌いというよりは、お年寄りに慣れていなかっただけらしい。
自分のじいちゃんばあちゃんも離れたところに住んでいるのでめったに逢うこともなく、そのためいざ逢うときはいつも人見知りしてしまっていた。
しかし、この仕事を始めてみると、患者さんはおろか、見知らぬお年寄りにもちょっと声をかけてしまいたくなるぐらい、お年寄り好きになってしまったのだ。
そのゲートボール軍団の中に、私とビキがそれぞれかわいいと思うおじいさんがおり、「このじいちゃんがうちの患者さんだったらぶちかわいがるのに」と、じいさんたちがわからないのをいいことに携帯で写真を撮りまくった。
じいさんたちは私の厚底に興味を持ち、それを素直に質問してくるさまもとてもかわいかった。
しばらく楽しく歓談した後、雨が小降りになったのでゲートボール軍団はそれぞれ家路に向かった。
自転車で元気よく帰っていく様子はとても頼もしい。
うちの患者さんたちのもこんな頃があったのかと思うと、そのときに逢ってみたかったとつくづく思う。
最初からいたおばあさんにも「小降りのうちに帰ったほうがいいよ」と促し、私たちもつるいちへ向かった。
期待していた釜玉は、つるいちではしょうゆではなくだしで食べる形態だったので、思っていたよりも汁っぽくなってしまい、期待していたほどのプルプル感はなかった。
でも麺とだしはどちらもおいしかったので、私はもう一玉、今度は山かけの冷やでつるっといった。
やっぱり讃岐うどんは冷やのほうがおいしい。
次に来るときは遠くてもしょうゆの釜玉を食べてみたいと思った次第である。

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