患者さんの食事も片付き、今度は自分たちの食事時間である。
食堂(と言っても単なる休憩室であるが)で弁当を広げ、患者さんの家人さんからいただいたロールケーキを切り分け、横のテーブルに座っていたマツムラとヤマナカにもひとつずつ回し、和やかな雰囲気。
だがそれも束の間。
いやでも聞こえてくるマツムラとヤマナカの会話が、私には完全にダメ!!であった。
マツムラが、きいたふうな口を聞きまくりなのだ。
社会人になって「飲みに行く」ということに大人を感じてうれしいのか、「まだ未成年だけど、飲みに行ったりしちゃう自分」を私たちにアピールしたいのか「昨日飲みに行ってぇ――――――。今日も飲みよー。もうアル中になったらどうしよう」などと大声で話している。
そうかと思えば、ヤマナカの彼氏が今日配属が決まり、配属次第では遠距離恋愛になってしまうという話をしていて、「そんなに大事なオトコなん?」と、アンニュイな女を気取っている。
18の小娘が何を言うか。ぷぅ、である。
そこまでは黙って聞いていたが、私が口を挟まずにいられなかったのは次の話である。ヤマナカは実は看護学校を受けたが落ちたためにとりあえず補助看になったのだ。
本人は来年看護学校を受け直して、最終的には看護婦になりたいらしい。
私も絶対にそのほうがいいと思う。
しかしマツムラは言った。
「でも看護婦になっても、結婚して子供ができたら、仕事辞めなきゃいけなくなるよ」
んなわきゃあるまい。
一生もんの資格だからこそ、みんながんばって取ろうとしているのである。
ヤマナカが「でも私の母さんは看護婦だけど、私がちっちゃいときもずっと仕事してたよ」と反論すると、「それは個人病院だからよ。大きい病院では絶対に無理!」と言い放った。
何を根拠にそんな風に言いきれるのかよくわからないが、このようにヤツは常になんに対しても自信まんまんに間違っているのである。

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