O川さんの黒糖飴?

2003年4月10日
O川さんという患者さんのことを覚えておいでだろうか?
お誕生日に私と売店に行って、こっそり補助看全員にチョコレートを買ってくれた、あのO川さんである。
あれ以来、O川さんはなにかと私を頼りにするようになり、そして、私にお金をくれようとするようになった。
O川さんの部屋に遊びに行くと2千円程度のお金を手に握らせようとする。
正直言ってそれはとっても困ることだった。
チョコレート程度ならいざ知らず、やはり現金、しかも2千円というとけっこうな金額である。
O川さんの気持ちもわかる。
しかし、それはやっぱり受け取れないお金だし、私はお金なんかくれなくてもじゅうぶんO川さんのことが好きなのだ。
しかし、お金を受け取らないということもなかなか難しい。
O川さんは難聴なので、断るにも大声で断らねばならず、大声で言っていると看護婦さんに見つかってしまう可能性がある。
それに、O川さんの方にもいったん出したお金は引っ込めにくいということがあるらしく、怖いぐらい強い力で握らせようとするのだ。
そして、何度目かに、ついに断りきれず私はO川さんから2千円を受け取ってしまった。
そして、そのお金を私は物で返すことにした。
O川さんは食事制限のない患者さんだし、以前書いたように売店で買い物するにも自由にならないので、私がO川さんの好きな黒糖飴や、むき甘栗を、2千円程度買って、それを少しずつ、ころあいを見計らって、こっそりO川さんに渡せばいいと思ったのだ。
ホントは、患者さんの買い物を個人的に引き受けることもいけないとされているのだが、それ以外手はないし、自分の善悪の基準に照らして考えても、そう悪いこととは思えない。
私はその日の帰りにさっそく黒糖飴とむき甘栗2千円分を買って帰った。
どうすれば誰にも見つからずに渡せるかとか、O川さんは果たして喜んでくれるかとか、そんなことを考えながら眠りについたので、その夜私は夢の中でも病院で働いてしまっていた。

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