2/26 2月いっぱい

2003年3月11日
2月いっぱいしか持たないだろうと言われていた末期ガンの患者さんのYさん。
2月にはいってからはふさぎがちで、毎日散歩に行くことだけが唯一の楽しみのようであった。
ホントは、私たちもそれなりに忙しいので、患者さんを毎日散歩に連れて行くような余裕はない。
せいぜい週1・2回である。
しかし相手は末期ガンの患者さんである。
もうすぐ死んじゃうのである。
そして全身刺青の元極道のYさんが「毎日散歩に連れて行ってほしい」とまるで子犬のようなかわいらしいお願いをしているのだ。
叶えてあげようではないか、と毎日のケアプランの中に無理して組み込んでいた。
しかし、そんな無理はすぐ必要なくなった。
毎日じりじりと容態は悪化し、散歩に行けない状態になってきたのだ。
汚い話だがオシッコはオレンジ色、便はあずきアイスのような色で、どう考えても普通ではない。
それでもベッド上ではまだまだ元気でイチゴを食べてベッドを赤く汚したり、鈴カステラを食べようとして袋がうまく開けられず、病室の床に鈴カステラを散乱させたり、とてももうすぐ死ぬとは思えなかった。
2月いっぱい持たないだろうと言われていたのに、もうすぐ2月も終わっちゃうなと思っていた昨日、看護婦さんたちが「Yさんは今夜が峠だ」と言って家人さんに連絡をしていた。
本当かなあ、まだまだ持ちそうだけどとずぶの素人の私は思っていたが、本当に今日、Yさんはすうっと亡くなってしまった。
お医者さんの言うことは本当だったなーと、葬儀屋さんのストレッチャ−に乗って退院していくYさんを見送りながら「散歩に連れて行け!!」と涙ながらに怒鳴っていた姿を思い出してしまい、涙が出た。

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