IGGYの後姿を見送っていると、スーツ姿のサラリーマンの一団が私の前を横切った。
カチャトラの上の店で飲み会をするらしい。
その中の1人、「ここの店です。どうぞー」と参加者を促している幹事っぽい男の人に私の目は釘づけになった。
ああっ!あなたは・・・。
その人は「浅草線の君」だったのである。
浅草線の君とは、忘れもしない2000年12月23日、浅草線の電車の中で私とビキがみそめたナイスガイなのである。
その日私たちはブラックボトムの新宿のイベントに行くために上京していた。
そのイベントが深夜のイベントだったので、その前に浅草に行ったのだが、その電車で、私たちが座っている前に立っていたサラリーマン2人組のうちの1人を見て、私はギョッとした。
その人は、ものすごくビキのタイプにぴったりの男の人だったのだ。
しょうゆ顔の上品な顔立ち、白くてきれいな肌、細くてきれいな指、そしてなにより先輩らしいもう1人のサラリーマンと会話から感じ取れるやわらかい物腰、それらすべてがビキ好みの様相を呈していた。
しかしビキは彼に気づいていないようである。
ビキに教えたい。
しかし教えることはできない。
なぜか。
彼が私たちのまん前に立っているから?
それもある。
が、それ以上に、彼が病的に毛のない人であったというのが一番の理由である。
彼はスキンヘッドであった。
そして眉もなかった。
それだけならば意図的にやっているということも考えられるが、ひげの剃り跡はおろか、手毛、指毛の類いも一切なかった。
恐らく彼は「毛が生えない人」なのだろう。
そんな彼の前でビキに耳打ちでもして、彼の無毛症についてひそひそ話をしたと誤解されてはたまらん。
私が「どうしよう・・・」と迷っていると、私たちの隣りの席が1つ空き、そこに彼の先輩が座り、彼は先輩の前にずれた。
今だ!

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