元気なときに

2003年1月29日
今日、昔のカーデックスを見ていたら、なんと、私が入る少し前までK重さんはご飯を食べていたらしい。
私の知っているK重さんは、経管栄養の患者さんで、声掛けに対してうなずくか「くぅーん」と子犬みたいな声をあげるのみである。
「K重さん、おーはーよーおー」と声を掛けると、10日に1回ぐらいの割合で「おはよ」と小さな声で言ってくれることがあり、そんなときはものすごくうれしくて「この仕事についてよかったー」と思う。
しかしカーデックスによるとK重さんは半年前ぐらいまで自分でご飯を食べていて、おしゃべりももっとできたらしい。
うそー!!
そのときにK重さんと逢いたかった。
もっとK重さんと話をしたい。
他にもA部さんのベッドサイドにおいてある写真は、まるで今のA部さんとは別人のようである。
今はやせて寛平ちゃんによく似ているA部さんだが、その写真はふっくらしていて、社会的地位もものすごく高そうだ。
そういえば、以前K石さんの娘さんが来ていたときに、K石さんがおかしなこと(天井の裏で犬が子供を10匹近く産んでいるとか、そんなことだったと思う)を言って、娘さんが「もう!そんなのいないでしょ!なんでそんなこと言うの!」とものすごい勢いで恥ずかしがったことがある。
私にしてみれば、そもそもK石さんはそんな人なのであり、そんなことを言ってこそK石さんだと思っていたので、娘さんの反応のほうに驚いたのだが、今思えば、K石さんは病気になる前はきっととてもいいお母さんだったのだろう。
50代前半で倒れてしまい、寝たきりとなったために痴呆の症状が出てしまったK石さん。
元気なときはどんな人だったんだろう。
患者さんの寝顔を見ているときなど、いつも心の中で問いかけてしまう。
あなたはどんな人生を送ってきたの?と。
そして自分に問いかける。
あなたはどんな老後を送れるの?と。

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