今日は患者さんのO川さんの96歳の誕生日だった。
O川さんはちっちゃくてとてもかわいらしいおばあちゃんである。
ホントにかわいい。
絵に描いたようなおばあちゃんである。
笠智衆が日本のおじいちゃんなら日本のおばあちゃんはO川さんである。
若い頃はきっとすごくかわいかったはずだ。
多分川村かおりに似ていたと思われる。
今も少し似ている。と言っても最近の川村かおりがどんなだかは知らないが。
96歳という高齢にもかかわらず、頭はものすごくしっかりしていて、ベッドサイドにはたまに漫画雑誌が置いてあるほどである。
近場は歩行機を使うが、おおむね車椅子移動。
でもそれは96歳という年齢からすればむしろ普通のことであろう。
身の回りのこともすべて自分で管理出来ているし、いったいO川さんはなんで入院しているんだろうな―と思っていた私は、お風呂でのO川さんを見てはっとした。
あんなにちっちゃいO川さんなのに、ふくらはぎから下が、まるで別人の物のようにものすごく太くてパンパンなのだ。
足首にもくびれがなく、正に象足なのだ。
膝から上はたるんでシワシワで普通のおばあちゃんの足なので、太ももよりも足首の方が断然太いというありえないことになっている。
まるでやっつけ仕事のアイコラのようだ。
初めてO川さんの足を見たときは、まるで秘密を知ってしまったようでどきどきした。
出勤してO川さんに「お誕生日おめでとう」を言いに行くと「みんなのおかげでこうしてやっていけているからありがとう」と言われウッときた。
その後も仕事をしていると補助看が次々O川さんの部屋に入っていき「O川さん、お誕生日おめでとう」と言っているのが聞こえてきた。
(O川さんは耳が遠くなっているためみんな大きい声で声かけするので、離れた部屋にいても聞こえるのだ)
それがO川さんにはとってもうれしかったらしく、午後から私はO川さんとちょっとした冒険を楽しむことになったのである。

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