癒しのパン屋さん

2002年10月26日
うちの近所に、癒しのパン屋さんがあった。
パンはもちろんおいしいが、それ以上に従業員がとてもいいのである。
最初そのパン屋さんは家から車で30分ぐらい行ったところにあるショッピングセンターの中にあった。
たまたまそこを通りかかったとき、陳列の仕方や、ショーカードなどの品のよさが目に付いてパンを買う気になった。
あれこれパンを選んでレジに持っていくとレジにいた2人の女性従業員がどちらもきれいで知的だったので驚いた。
スチュワーデスとかアナウンサーとか、そのくらいのレベルの美しさと知性の兼ね備えっぷりである。
そして2人ともとても感じのよい笑顔で、私と美幸ちゃんはただただうっとりするばかりであった。
帰りの車の中でも「何じゃ、あの超ハイレベルのパン屋は!」と、その話で持ちきりであった。
それからはそのショッピングセンターに行くたびにそのパン屋に立ち寄るようになったのだが、驚くことに、その2人のみならず、他の従業員も軒並み美しく、知的で、感じがよかったのである。
販売だけでなく製パンの方にも携わっているらしく、パンに対する知識や情熱も高い。
どうやってこんな人ばかり集めてきたのであろうか?
私たち姉妹はそのパン屋を癒しスポットとして楽しんでいたのであるが、あるときそのショッピングセンターに行ってみると、そこは違うパン屋さんになっていたので大いにがっかりした。
それからしばらくしたある日、近所を散歩中にそのパン屋さんを発見した。
そこに前からあったのか、ショッピングセンターから撤退して引っ越してきたかはよくわからないが、とにかく私はその店に飛び込んだ。
やはり従業員はみな美人で知的で接客態度もよかった。
私は早速美幸ちゃんに報告し、それから美幸ちゃんは毎日のように夕方仕事帰りにそのパン屋さんに立ち寄るようになった。
そのうちに「いつもありがとうございます」とおまけのパンをもらったりするようになって、ますます美幸ちゃんは癒しのパン屋にのめりこんだ。
しかし、そのうち美幸ちゃんの勤務時間が変わり、帰りが少し遅くなったので、なかなか帰りに立ち寄ることができなくなり、いつしか足が遠のいていった。
先日久々にそのパン屋に行った美幸ちゃんから「癒しの店じゃなくなっていた」という嘆きメールが届いた。
私も確認のために今日仕事帰りに立ち寄ってみたが、あんなにいた癒し系従業員が一人もいなくなっており、単なる普通のパン屋さんになっていた。
今となってはあの超ハイレベルのパン屋は幻になってしまったが、まるで狸にでも化かされていたのではないかと思うほど、ホントに浮世離れした従業員ばかり集めたパン屋さんであった。

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