アライさんの矛盾

2002年10月24日
今日お昼ご飯のときにイギタさんとアライさんと一緒になった。
イギタさんもまだこの仕事をはじめて日が浅いらしく、いろんな病院を渡り歩き定年を迎えた後にこの病院に再就職したアライさんは私たちに介護について一席ぶった。
曰く「患者さんのことを下の名前で呼んだり、『おじいちゃん、おばあちゃん』などと呼んだりするのは絶対にいけない」
その件に関しては私も疑問に思っていたのだ。
私ももちろん、言われるまでもなくそんなことはわかっていた。
下の名前や、「おじいちゃん」などと呼ばれてうれしい患者さんもいるかもしれないが、私も以前の会社でお客さんに「お姉さん、ちょっと」などといわれたら内心「弟(妹)でもないアンタからお姉さん呼ばわりされる覚えはないよ」と思っていた。
家人さんにしても、自分の親なり配偶者なりが「○○ちゃん」と呼ばれるのを聞いて、かわいがってもらっているととる人もいるだろうが、バカにされているととる人の方が多いと思う。
だから、患者さんには敬意を表し、苗字にさん付けで呼ぶべきであると、当然のように思っていた。
だが、いざふたを開けてみると「チカちゃん」、「ユキエちゃん」、「アヤちゃん」、「S富のばあちゃん」などのオンパレードである。
私は理想と現実の違いにちょっと落胆したが、自分はこれからもそのスタイルを貫こうと思っていた。
それだけにアライさんの話は「やっぱそうですよねぇ」というカンジであった。
もうひとつアライさんは「介護とは『してあげる』という気持ちですべきものではなく、『させていただく』ものなのだ」という話をした。
私はこういう考え方はとても好きである。
介護する側は「させていただいてありがたい」、される側は「してもらってありがたい」、そういうふうに心から思えたら理想的なことだと思う。
昼食の後はオムツ替えなのだが、そのとき私はアライさんと組んだ。
A井さんのところまで来たとき、アライさんがピョコっと「ハナちゃん、足を真っ直ぐせんにゃ」と言った。
あん?話違うやん?
さらにO崎さんのところで、オムツ替えのときに体をあちこち向けられることを痛がるO崎さんにアライさんが「痛くたってオムツを替えるんじゃから仕方ないの。我慢せんにゃ!」と言うと、O崎さんが「何をえらそうに。えらくもないくせに」と反撃した。
それに対するアライさんの答えは「なんかね!人がオムツを替えてあげてるのに。もうやってあげんよ!」であった。
たった20分前に熱く語っていたあの話はどうなったのでしょうか?
やっぱり自分の心の中の理想は、自分で追求していくべきだと悟った私である。

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