「ト・トオルタケウチって!!」
私はビキの肩を強く揺すぶった。
え、なになに??それはトオルが今日出るっていうこと?
私は激しく取り乱した。
ひとしきり暴れて、やっと落ち着いたあと、ビキの携帯を借りて(自分のはバッテリーが切れていた)、めぐにTELし、更に興奮の度合いを高めた。
それから更に恵美子ママにもTELして、自分の幸運を称えた。
恵美子ママが細かいトオル情報をいろいろ教えてくれたのだが、あまり耳に入っていなかった。
あー、来てよかった!神様ありがとう。
さあ、気合を入れて双眼鏡の調整をいたしましょう。

トップはローリン・ヒル。
え?いきなりしょっぱなからローリン・ヒル?
開演は17時からだったのでまだ席も埋まりきっていない。
まだ会場が全然暖まっていない段階である。
そしてローリン・ヒルが「こんにちは―!ローリン・ヒルでーす!みんなのってるー?今日は盛り上がってきましょう!イエーイ!」などとあおるはずもなく、淡々と現れ、ギター1本で熱唱し始めた。
ローリン・ヒルをわりかし楽しみにしていた私ですら、出てきた瞬間は「ちっちぇー。ってことはトオルもあのぐらいの大きさにしかみえんってこと?」と邪念でいっぱいになっていた。
しかし、それも落ち着いてくると、やはりローリン・ヒルの歌声は素晴らしかった。
それだけに、今、こんなにざわついているこの会場が残念でならない。
人が続々と入場したり、移動したりしているBGMのようである。
完全にローリン・ヒルの無駄づかいであった。
次は平井堅。
いい人だった。
そして歌もうまかった。
これまで特になんの感情も抱いていなかった平井堅だが、けっこう好きになった。
ビキも同感だったようである。
そして、トオルが出ると知るまでは、一番楽しみであったT―スクエア。
かっこいいー!
伊東さんも安藤さんも、とても気持ちよさそうだ。
私も立って踊りたいところだが、そこまでテンションをあげるには、あまりにもステージは遠すぎた。
でも、アリーナ席で楽しそうに踊っているお客さんと、気持ちよさそうに演奏している2人を交互に見ているだけで、私も楽しかった。
T―スクエアが終わって、私たちはトイレに立った。
ものすごい行列ができている。
次は誰だろうか?
次がケミかゴスならば、トイレをあきらめて席に戻らなくてはならないだろう。
最初にスクリーンに次の出演者の映像がひとしきり流れた後、本人たちが登場するシステムだったのだが、スクリーンには女の子が現れた。
しかし倉木麻衣ではない。
誰?
そのうちにたくさんの男女の映像に変わった。
コレアジャパン?
そのコレアジャパンの中からぎゅ―んとカメラが寄って、ケミの2人が映し出された。
「こんばんは。ケミストリーです」
ケミやんけー!
私たちは大慌てで自分の席に戻った。
やれやれ。
さあ来いトオル!

コメント