いやっほう!
いきなりテンションが高いが、今日は博多でトオルである。
テンションも上がろうというものだ。
高速バスで博多まで。
祭日でお客さんが多い。
バスに乗るなり、「今日は祭日で高速も混むし、博多どんたくも開催されているので、バスの遅れが見込まれます」というアナウンスがあった。
しかし、「大丈夫大丈夫。そんなこと承知の上よ。ただし私はトイレが近いからその点だけ配慮していただけたら」と私とめぐはかなり鷹揚に構えていた。
私たちの斜め前の席に黄色のオーストリッチのバーキンを、これ見よがしに抱えた上品ぶったババアが居り、かなり乗るなり注目していた。
ババアはトイレ休憩のSAで自販機のフライドポテトを買ったようで車内で食べ始めた。
あんなのおいしくもないのに・・・と要らぬお世話で注目していたのだが、これがまた癇にさわる食べ方なのだ。
左手にティッシュを持ち、右手でポテトをつまむ。
そしてポテトの周りに左手のティッシュを巻き、また右手に持ち替え、1本のポテトを3口ぐらいで食べている。
モグ・モグ・・・と食べて、左手の指でティッシュの中に埋もれた部分を引き出して食べるのだ。
1本ごとにそれが繰り返される。
それ、ティッシュの意味が全くないのではないだろうか?
何をそんなに上品ぶってるのか知らないが、そんなものをバスの中で食べている時点で充分品がない。
バスは予測どおり遅れている。
高速とは思えないスピードで進んでいる。
雨も少し降ってきたようだ。
ババアがおもむろに携帯を取り出したので、私とめぐは「ババア・・・」と目配せした。
ババアはどこだかにTELし、「今日予約しておいたN原ですけど・・・」と本名、携帯No.、自宅TELを白日のもとにさらした。
「ええ、のろのろのろのろ進んでるんです」などと言っている。
のろのろするのは当たり前だろうが!
お前の読みが甘いのだ。
どうも会話の内容から判断すると、ババアはこれから観劇のご様子である。
私は博多座で「ラマンチャの男」をやっていることを思い出した。
このババア、ラマンチャだな。
いかにも松本幸四郎にときめきそうなババアである。
1時開演らしく、途中入場はできないシステムらしい。
1時開演なら今日はもう1本早いバスで来いよ。
私なら前の日から泊まるね。
私はこの準備の悪いババアにますます憤った。
よっしゃ!がんばれ渋滞。
私たちもさっきからおなかがすいているのだが、空腹ぐらい耐えるからもう少し遅れてくれ!
私たちは俄然時間を気にしはじめた。
ちなみに定刻だと11時ごろに到着なのだがこの時点ですでに11時半を過ぎていた。
ババアは隣りの席の人に博多座に行くにはどこのバス停が近いのかと聞いた。
調べとけ、そんぐらい。
隣りの人はるるぶを見てアドバイスをしてあげていた。
ババアは「もうほんとにこんなに遅れて、ねぇ。やっぱり新幹線じゃないとダメね」などと言っているが、そうじゃないだろう。
お前が一本早いバスで来い!
行きのバスの間中、N原ウォッチングで過ごした私たちの願いもむなしく、バスはギリギリ間に合いそうな12時35分に最寄りのバス停に着いた。
ババアは即座にタクシーを拾い、乗りこんだ。
道は混んでいるがどうも間に合ってしまいそうだ。
私たちは博多座へ向かう道に「もっと混んでくれ!」と最後の念を送りながら、アクロスへ向かったのだった。

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