火事

2002年2月19日
17日の夜中、正確にはもう18日に日付は変わっているのだが、TV番組ならば17日の25時放映とか表現される時間に、私は煙たさで目が覚めた。
イチコも美幸ちゃんもぐっすり寝ている。
美幸ちゃんはインフルエンザで熱が高くて寝苦しがっていたが、やっと寝たようだ。
それにしても煙い。
私はすぐにイチコの火の不始末を疑った。
だが灰皿もくすぶっている様子はないし台所もストーブも火の気はない。
台所で首をひねっていると、外から「火事だ」というざわめきが聞こえてきた。
私は慌ててイチコと美幸ちゃんを起こした。
「火事らしいよ」
うちのアパートの5階が燃えていたのである。〈*家は1階)
とりあえず今シーズン一度も洗っていないフリースのパンツからGパンに履き替え、外の様子をうかがおうとすると消防車が3台やってきた。
イチコは完全に取り乱しかなり迷惑な存在となっており、起こしたことをやや後悔していた。
近所で火事があると自転車ででも駆けつけるくせに、あまりにも近所すぎると過剰にビビり、どこが燃えてるか見て来いと言っても、「怖い怖い」と言って家の中をうろうろしているのみである。
今もたもたと家の中をうろついている方がよっぽど怖いっちゅうに!
そのうち消防隊員が拡声器で「生存確認をしたいので居住者の方は出てきてください」と言い出した。
それでもまだイチコがもたもたもたもたしていると、いきなりバチンと停電し、それでイチコは慌てて外に飛び出した。
そして1歩外に出たが最後、私たちは中に入ることを許されず、避難させられた。
燃えている部屋に住んでいるのは知らない人だ。
消防隊員があの部屋に住んでいる人を見かけた人はいませんか?と聞いている。
誰もいないようだ。
私も名前は聞いたことはないが、もしかすると、セブンイレブンのお客さんだったりして面識はあるのかもしれない。
今となってはわからないのだが・・・。
かなり長いことかかって、ようやく火は消えた。
消えたと言うか・・・燃え尽くしたというカンジであった。
窓枠を壊して部屋の中に隊員が入っていく。
ほどなくストレッチャ―が運び込まれた。
そのストレッチャ―で、きっと遺体が運ばれてくるのだろう。
私と美幸ちゃんは勝手に家の中に入ってしまった。
それだけは、どうしても見たくなかったのだ。

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