久留米に行く ?

2001年7月28日
駅まで送ってもらい、恵美子ママと別れて、私たちは独自の久留米ライフに突入した。
プリクラを撮ったり、一番街をブラブラしたり。
二重コスメをいっぱい売ってる店があったので適当にみつくろって購入し、恵美子ママの家の郵便受けに入れておいたりもした。
しかし、それら一連の行為は、実は単なる時間つぶし&腹ごなしに過ぎなかったのだ。
私たちは久留米でもう一食食べなければならない事情があったのだ。
以前久留米に来たとき、ぶらりと入ったご飯屋さんがたいへんに「当たり」だったのだ。
なんであのときその店に入ったのかよくわからない。
なんとなく一見さんを拒む気配のする和風の店で、引き戸を開けるといきなり砂利が敷き詰めてあり、庭のようになっている。
おっとりした奥さんみたいな人が、台所のような厨房で料理を作っている間、私たちは座敷で、台の上においてあるジグソーパズルや、木片を組み合わせたりするパズルを楽しんだ。
そのうちに私たちが頼んだ温泉湯豆腐セットが、グツグツいいながら運ばれてきた。
皆さん温泉湯豆腐をご存知か?
私はよく「美味しんぼ」を情報源にしているが、この温泉湯豆腐についても「美味しんぼ」で読んで知っていた。
温泉のお湯(「美味しんぼ」でもここでも佐賀の嬉野温泉のお湯を使っていた)で湯豆腐を作るのだ。
すると温泉の成分によって豆腐が微妙に溶け出し、一見すると豆乳で煮たようなカンジになる。
野菜もいっぱい入っていて、豆腐も半溶けでとろっといいカンジになっている。
それをゴマだれで食べるのだ。
ご飯は黒米(黒いお米で、ご飯に混ぜて炊くと赤飯のようなカンジになる)ご飯で、もちっとしてとてもうまい。
それにお漬物と冷やしぜんざいがついて800円。
どう考えてもこの店だけでは生活は成り立たないであろう。
奥さんの趣味でやっているような店であった。

その温泉湯豆腐がとても美味しかったので、私たちは今日もそこで食べたかったのだ。
でも、奥さんの気まぐれでやっているようなお店なので、ショッピング中にも私たちは何度も様子をうかがい、外から灯りがついているのを確認した。
そしておなかもすいてきたので、満を持して引き戸を引いた。
中に一歩入った途端にものすごい違和感がある。
暑いのだ。
それ以外は、まったく「営業中」な雰囲気なのだが、暑さだけが尋常ではない。
「すいませーん」と声をかけるが店内は無人。
やられた。灯りだけで判断してはいけなかったのだ。
私たちは店を出た。
ああ、今日はもう駄目だなと思っていたが、めぐは諦めがつかない様子で、「もう一周まわってきてみよう」と言った。
一周してきても結果は同じだった。
めぐはさっきよりも大声かつしつこめに「すいませーん」と声をかけていた。
なんと、めぐはもう一周して再挑戦するという。
確かに鍵が開いているということは脈ありなのだ。
私はめぐに従った。
そして再挑戦。
何度も何度も「すいませーん」と声をかけるが返事はない。
さすがにあきらめて悪態をつきつつ店を出ると「すいませーん」と走ってくる人がいた。
店の奥さんだった。
「ちょっと向かいの店に行っていたものですから」と言うが、時間長すぎだ。
多分奥さんは店が暇になると向かいのお店でおしゃべりをしながら自分のお店の様子をうかがっているのではないか。
私たちが行ったときも「いいか」と思いそのままにしていたが、私たちのしつこさに「もう逃げきれん」と観念して出てきたと思われる。
なんにせよ、めぐの思いがけぬ粘りのおかげで、今日もまた温泉湯豆腐が食べられた。
粘った甲斐があったと思える美味しさであった。
ご飯中に、二重コスメを発見した恵美子ママから電話があった。
楽しかった久留米の1日は、こうして幕を閉じたのだった。

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