身支度も整い、いい時間になったので石川町方面へと繰り出す。
CRIBの前に着き、向かいの洋食屋さんのサンプルを見て、ビキが「このビーフシチューだけで私らの今日の昼の飲茶代と一緒」と言った。
そうなのだ。
いつも私はこの洋食屋さんを「おいしそうだな―」と思ってみているのだが、いかんせん値段が高い。
ビーフシチューが2000円なのだ。
しかしこんな高いんだからさぞかしおいしいに違いない。
ひそかにいつか食べてやろうと狙っているのだ。
そんなことを言っていると下から誰かが来る気配があった。
誰だろうと注目しているとIGGYであった。
私の口から勝手に「IGGY・・・」という声が漏れた。
声というよりは吐息に近く、発した私にもやっと聞こえたような声だったのに、IGGYはハッとして振り返った。
でもそのまま一言も発さずに私の前から立ち去っていった。
帰って来たときにH”のデジカメで写真を撮らせてもらおうと、試しにビキをライトの下に立たせて「ちょっと暗めだけど撮れる撮れる!」と盛り上がっているときにIGGYはサッと返ってきて地下へと消えていった。
ア――レ―――!!!!
しょうがないので私たちもうろうろして、近所の古着屋さんで半袖のシャツを買いウキウキした。
その後、モスでお茶してCRIBに戻ると、件の洋食屋さんの前でビキが固まり「王子・・・」と言った。
ふと見ると洋食屋さんの中にIGGYがいるではないか。
キャー!!!
王子さんもいる。
さすがビキは王子さんファンだけあって王子さんに気づき、一方私の目には一番にIGGYが飛び込んできたのだ。
私たちはちぎれるぐらい手を振った。
多分まだ料理はテーブルの上にきてなかったと思うが、ビキと「王子さんはブルジョアだからビーフシチューだ」とか、「IGGYはかわいくチキンライスに違いない」とか、他にもちょっとここには書けないような勝手な憶測に花を咲かせた。
CRIBの中に入っても勝手なことばっかり言ってゲラゲラ笑っていた。
楽しいなー。
コンタクトをつけての初CRIBだったがとってもよく見える。
あんなに遠くにいるIGGYの表情まで見えるのだ。
薄暗いこともあって、いつもは「多分あれがIGGY」ぐらいにしか見えてなかったのだ。
コンタクトってすごい。
あー、幸せ。
コンタクトを発明した人にノーベル平和賞を!!!と思うぐらいうれしかった。
ライヴが始まるとコンタクトなしでもじゅうぶん見えすぎるぐらいの近くに行った。
今日はなんだかIGGYの見せ場がすごく多くてうれしい。
やっぱりIGGYはカッコイイな―と思う。
瞬きも忘れてじーっと見すぎたために目が乾いてきてコンタクトがちょっと浮いてきたので、あわてて悲しいことを考えて涙を出そうとした。
「もしブラックボトムが解散したら」
しかしこのテーマは目をちょっと湿らせるには重すぎたらしく、私はせっかくのライヴ中に悲しみで押しつぶされそうになった。
今こうして書いていても泣きそうだ。
あー、イヤだイヤだ。今のはナシ。


コメント